『源氏物語』の作者である紫式部が描かれた二千円札はまだ使えるの?価値は?

勉強コラム

2024年度前半に、一万円札、五千円札、千円札のデザインが新しくなります。
新一万円札には渋沢栄一、新五千円札には津田梅子、新千円札には北里柴三郎の肖像が採用されました。
およそ20年ぶりの新紙幣の発行ということで、一万円札、五千円札、千円札が世間で大きな話題となり注目される一方、脚光を浴びることなく、すっかり『幻の紙幣』となってしまった二千円札。
今回はそんな不遇の紙幣、二千円札について見ていきます。

目次

二千円札とは


二千円札は、第26回主要国首脳会議(九州・沖縄サミット)の開催と西暦2000年(ミレニアム)を記念して、2000年7月19日に発行されました。
2003年度までに8億8千万枚が発行されましたが、、2004年度以降は一度も製造されていません。
二千円札の流通量は、2004年の5億枚ほどをピークに減少し、現在では1億枚弱。1億枚と聞くととても多いように感じますが、全紙幣の流通量の1%未満に過ぎません。
発行から20年以上が経過していますが、流通量の少なさから二千円札を目にする機会がほとんどないのが実情。もしかすると、二千円札の存在を知らない方がいらっしゃるかもしれませんね。

二千円札のデザイン(表面)

二千円札の表面には、沖縄県那覇市にある首里城の守礼門が描かれています。
守礼門は戦前国宝に指定されていましたが、沖縄戦で焼失。戦後再建され、現在は沖縄県の指定有形文化財になっています。

また、首里城は『琉球王国のグスクおよび関連遺産群』として世界遺産にも登録されています。
守礼門が九州・沖縄サミットの開催地である沖縄の歴史的建造物であることから、表面のデザインに採用されました。

二千円札のデザイン(裏面)

二千円札の裏面には、3人の人物と文字が描かれています。

裏面左側の2人の人物は、
・左が光源氏の子どもである、冷泉院(れいせいいん)
・右が、光源氏
です。

『源氏物語絵巻』第38帖(じょう)『鈴虫』の絵で、冷泉院から一緒に月を見たいと呼び出された光源氏が、冷泉院と対面して座っている様子が描かれています。
文字は、同じ『源氏物語絵巻』の『鈴虫』の詞書(ことばがき)ですが、一部だけが描かれているため、読んでも意味はわかりません。
二千円札に描かれているのは、下記の文字が斜めになっている部分です。

すゝむし
十五夜のゆふ くれに仏のおまへ
に宮おはしては しちかくなかめ
たまひつゝ念殊 したまふわかき
あまきみたち二 三人はなたてま
つるとてならす あかつきのおとみつ
のけはひなとき こゆさまかはりたる
いとなみにいそ きあへるいとあわれな
るにれいのわ たりたまいてむしのね
いとしけく みたるゝゆうへかな
と・・・

冷泉院と光源氏の絵も詞書も、同じ『源氏物語絵巻』の『鈴虫』のものですが、絵は『鈴虫』の『その2』、詞書は『鈴虫』の『その1』のものと、場面が一致しません。
さらに、詞書は一部分だけが描かれており、少しちぐはぐな感じがしますね。

裏面右側の下の方に描かれている人物は、『源氏物語』の作者である紫式部です。
『紫式部日記絵巻』の中に描かれている紫式部の絵が二千円札のデザインとして採用されました。

平安時代中期の作家・歌人である紫式部。夫である藤原宣孝(ふじわらののぶたか)が亡くなった後、『源氏物語』や『紫式部日記』を執筆し、藤原道長の娘である彰子の家庭教師役も務めました。
『源氏物語』と『紫式部日記』は後に絵巻物が制作され、その中の絵や詞書が二千円札のデザインに採用されています。

なぜ、『源氏物語』と紫式部が二千円札に描かれることになったのでしょうか。
財務省によると、『源氏物語』が世界に誇るべき文学作品であることから、『源氏物語』とその作者である紫式部をデザインに採用したようです。
源氏物語は、今からおよそ千年前の平安時代中期、紫式部により書かれた、我が国が世界に誇るべき文学作品です。

左側には「源氏物語絵巻」の「鈴虫」の絵と詞書を重ねたものが、右側には「紫式部日記絵巻」の紫式部の絵を素材としています。
なお、「鈴虫」の詞書については、絵の場面とは異なりますが、「鈴虫」の冒頭にあたり、「すずむし」の文字がみられ、また、文字の美しさという点で評価が高いことなどから採用したものです。

「源氏物語絵巻」の「鈴虫」の絵と詞書及び「紫式部日記絵巻」に描かれている紫式部の絵は、いずれも東京都世田谷区の五島美術館が所蔵しています。❞
出典:財務省ウェブサイト(https://www.mof.go.jp/faq/currency/07am.htm)

絵と詞書の場面が一致しないのは、『すずむしの文字を入れたい』『文字が美しい』というデザイン上の理由が大きいようです。

二千円札はまだ使えるの?価値は?

すっかり見かけることがなくなってしまった二千円札ですが、今でも有効な紙幣なので当然使うことができます。
二千円札は『現役』の『有効』な『ちゃんとした』紙幣です。日本銀行のウェブサイトの『現在発行されている銀行券』の一覧の中にも、二千円札が入っています。

ただし、自動販売機や券売機などは二千円札に対応しているものでしか使うことができません。
守礼門がある沖縄県では、二千円札の利用促進に積極的に取り組んでおり、ATMなどでお金を引き出す際に二千円札を選べる仕組みになっているそうです。
二千円札は、目にする機会がほとんどなく『レア化』していますが、価値は額面通り。他の紙幣と同じく、『印刷ミスがある』『ゾロ目などの珍しい番号』であれば価値が高まるようです。

流通量が少なく、馴染みのない二千円札。もし手にする機会があれば、デザインをよく見てみてください。いろいろな発見があるかもしれませんよ。