「お願いします」の敬語表現|全学年/国語

勉強方法

「敬語は正しく使えた方が良いが,正しく使えている自信がない」という人,多いのではないでしょうか。
ある調査によると「敬語は伝統的な美しい日本語として,豊かな表現が大切にされるべきだ」と考える人の割合が50%以上となっています。一方で,「敬語の使い方の間違いが増加している」と感じる割合は80%を超えています。この結果からも,敬語に対する意識は高いものの,実際には自信をもって使えていない人が多い,ということがうかがえると思います。
時と場に応じて,適切な言葉遣いができることは,相手への敬意を示すとともに,相手への印象をよくすることもできます。もちろん,過度な敬語表現は嫌味に聞こえたり,逆に悪い印象を与えてしまったりすることもあるので注意は必要です。
正しい敬語を知ることが,相手に誤解をされずに,適度な距離を保つ近道といえるのではないでしょうか。無数に存在する日本語,その数だけ敬語が存在すると言っても過言ではありませんが,その中からここでは日常生活でよく話し,よく聞く「お願いします」の敬語表現について考えていきたいと思います。

目次

「お願いします」とは,どういう言葉?

「お願いします」は「お・願い・します」に分解することができます。「お」は敬語で使われる接頭語,「願い」は名詞,「します」は「する」の丁寧語でこれも敬語の一種です。ということで,「お願いします」はそもそも立派な敬語表現ということもできます。しかし,あまりにも使われる場面が多いため,発する方も受け取る方も敬意を感じにくい表現になっているのも実状です。また,上司や目上の人に使うと,どこか命令口調のように感じられることもありますので注意が必要です。それでは,どんな表現や言い換えができるのでしょうか。

「お願いします」のいろいろな敬語表現

【表現①:お願い致し(いたし)ます】
これは,「お願いします」に「する」の謙譲語「致す(いたす)」をつけた表現です。「お願いします」より丁寧な表現になります。
しかし,この「お願い致し(いたし)ます」,一つ大事な注意点があります。それはメールや文書で使用する場合,「致します」ではなく,「いたします」とひらがな表記にする点です。
他の動詞に付属する補助動詞はひらがなで書く,という決まりがあり,「お願いする」という動詞に補助動詞の「いたす」をつけるので,「お願いいたします」となります。
また,「致す」には「良くない結果を引き起こす」という意味もあるので,依頼する場面ではふさわしくない表現といえます。

【表現②:お願い申し上げます】
こちらは,「お願いします」に「言う」の謙譲語である「申す」をつけた表現です。「お願いいたします」がやや強い依頼に感じられるのに対し,「お願い申し上げます」はお願いを「言う」にとどまる表現なので,謙遜の気持ちが含まれます。
しかし,「お願いいたします」と「お願い申し上げます」をはっきりと区別して使用することはほとんどありませんので,どちらを使っても間違いではありませんし,失礼にもなりません。

副詞の「何卒」「どうぞ」,形容詞の「よろしく」を付け加えることで丁寧度を上げる

表現①や表現②に副詞の「何卒(なにとぞ)」や「どうぞ」,または形容詞の「よろしく」をつけて,「何卒,よろしくお願いいたします」「どうぞよろしくお願いいたします」といった表現により,より丁寧な依頼表現にすることができます。
「何卒」は堅苦しいイメージが強い言葉なので,文書等で使われることが多い表現です。逆に「どうぞ」は話し言葉ですので,文書では使わずに口答表現のときに使われます。また「よろしく」を「宜しく」と漢字で書くこともありますが,「宜しく」は当て字ですので,「よろしく」とひらがなで表記します。

具体的な依頼内容を示す

「お願いします」という表現は,良くも悪しくも非常に使いやすく,何気なく使ってしまう言葉です。
また,文章や会話の締めくくりに使うことで,区切りをつけることができます。とても便利で使い勝手の良い言葉です。そのため,一方では,何をお願いしているのか,何をお願いされたのか,が曖昧になってしまう場面も多くあります。それが「お願いします」という言葉を軽く感じさせる原因でもあるとも思います。
そこで,何をお願いしているのかをはっきり示すことで,「依頼したいという強い気持ち」を伝えることができますし,依頼を受けた相手も何をすればよいのかを認識できます。使用例としては,

 ・〇〇を(ご確認を)よろしくお願いいたします。
 ・〇〇の程(ご査収の程),よろしくお願い申し上げます。
 ・〇〇いただきますよう(ご了承いただきますよう),よろしくお願いいたします。

その他の「お願いします」の敬語表現

その他にも,様々な依頼表現があります。例えば,

 ・お願いできませんでしょうか。
 ・~をしていただいてもよろしいでしょうか。
 ・~をお願いしてもよろしいでしょうか。
 ・お願いしたく存じます。

などです。

まとめ

「お願いします」に限らず,日本語には同じ内容を表現する言葉がたくさんあります。その中でも敬語は,使い方や使う相手,使う場面によって注意が必要な表現です。あまりに丁寧すぎると嫌味に捉えられてしまうこともありますし,使わなすぎるとそれもまた不信感につながることがあります。
会話は話し手の意図が聞き手に伝わりやすいですが,文書やメールでは文面だけが受け取られてしまいますので,相手との関係や距離感を意識して敬語を使う必要があります。正しい敬語を正しく使えるように,様々な敬語に触れてみましょう。
そして,実際に使ってみましょう。「習うより,慣れろ」が敬語マスターへの一番の近道です。

学校で敬語を学問的に習うのは「国語」の時間です。「国語」はすべての学習の基礎となります。美しい日本語を正しく使える人になるためにも,「国語」の学習は大切です。
しかし,「国語はちょっと…」「国語,嫌い」「国語って難しい」と感じている人が多いのも確かです。ところが,コツさえつかめば,メキメキと力が付き,ぐんぐん成績アップが期待できるのも「国語」です。

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こちらの記事の監修者

浅井保(あさい たもつ)

  • ・北海道大学文学部卒
  • ・家庭教師のアルファ 講師部長

2008年に『家庭教師のアルファ』のプロ家庭教師として活動開始し、数多くの生徒への学習指導を経験。
現在、株式会社アルファコーポレーション講師部部長。