敬語表現「言う」について|全学年/国語

勉強方法

「人間関係は、言葉に始まって言葉に終わる」そのようなことをしばしば耳にします。日々の生活は、「おはよう」の挨拶から「おやすみなさい」の挨拶で終わり、職場においても、「おはようございます」で始まり、「お先に失礼します」、それに答えて「お疲れさまでした」で終わることが多いことでしょう。そうしたことからも、言葉は人間関係の基盤(少なくともその大きな要素)と言って差し支えないように思われます。
 そうした人間関係において、敬語表現は、誤ってしまうと関係そのものにひびを入れかねないほど大切なものでありながら、単純で明快ではないために(浅野信先生も、『吾が国が敬語の国といはれるほど、極めて微妙で多色である』と述べておられます)、おかしな使い方をしてしまうことがままあるようです。文法的な決まりは(少なくともある程度は)覚えているはずなのに、実生活ではうまくそれが適用できない ― そのようなことがよくあるように思われます。これを防ぐには、典型的な例をしっかりと頭に入れておき、それを軸にして考え、判断することが有効です。ここでは、「言う」の敬語表現について、具体例を挙げながらお伝えします。

目次

「言う」の尊敬表現

「言う」の尊敬語は?と問われた場合、「おっしゃる」と答える人が多いように思います。「おっしゃる」以外にも、敬語の文法上の原則(下の*参考 をご参照ください)に照らし合わせた場合、「言われる」も「言う」の尊敬語として成立します。この2通りというのは、シンプルな方と言えるように思います(3通りや4通りの尊敬表現がある動詞もありますから)。けれども、それでもなかなか明快瞭然とはいかないのが敬語です。実例をしっかり頭に入れ、覚えてしまいましょう。

[状況ⅰ 上司に、その上司が言ったことについて質問したい]
「先ほどおっしゃったことについてお尋ねします」
「先ほど言われたことについてお尋ねします」
 どちらも正しい尊敬表現です。「おっしゃた」を用いるほうが、「言われた」よりも大きな敬意を払っている感じになります。その上司との距離感によって、より適切なほうを選択しましょう。

[状況ⅱ 外からかかってきた電話を取り次ぐ]
「課長、○○とおっしゃるかたから電話です」
※この場合は、「言われる」はあまり用いられません。
 
【!】ご注意あれ
 良く耳にする表現として、「申される」というものがあります。上記[状況ⅰ]の場合ならば、
「先ほど申されたことについてお尋ねします」となる言い方です。
 これは、誤用とされています。「申す」は「言う」の謙譲語です(第四段落をご参照ください)。これについては、平家物語や徒然草などにも「申されけり/ける」はある(ので、認められるべき)ではないかという意見もあり、完全に煮詰めきることは難しい用法であるかもしれませんが、「おっしゃる」という言い方があるわけですから、(言わば素直に)それを使うべきではないかと思います。

【!】ご注意あれ
[状況ⅱ]では、「○○という人から電話です」という言い方を聞くことが多いです。きちんと「○○とおっしゃるかたから」と言いたいものです。ちなみに、○○という呼び捨てに抵抗があるのであれば、○○様とします(呼び捨てでもこの場合は問題ありません)。

明確な違いが落とし穴に(よくある誤り「二重敬語」)

尊敬語は、自分(や身内)がへりくだる謙譲語とは異なり、相手に対して敬意を抱いていることを伝えるための形ですから、その「伝える」を、「確実に、明確に伝える」としたい心理が働くのは当然です。しかしながら、この「明確を欲する心理」は、落とし穴ともなります。二重敬語(という誤用)がそれです。
 上記の「おっしゃる」も、「おっしゃられる」としてしまっているのをたびたび耳にします。二重敬語で誤用です。注意したいものです。

×「先ほどおっしゃっられたことについてお尋ねします」
×「課長、○○とおっしゃられるかたから電話です」
×「先ほど申せられたことについてお尋ねします」(論外です)

「言う」の謙譲表現

「申す」を用います。よりへりくだるべき場合には「申しあげる」です。これも具体例を見ていきましょう。

[状況ⅲ 他社を訪問し、名乗る]
「わたくし、アルファ商事の◎◎と申しますが、営業2課の●●さんはいらっしゃいますでしょうか」
※この、名乗る場合の「申す」は、初対面に限って用いるのがルールであるという意見があります。『理屈で考えれば』そうなのでしょうが、実際には、相手が一度会っただけのこちらを覚えてはいないことも多いため、あまり神経質になる必要はないと思います。

[状況ⅳ 訪問した相手に、自社の上司や責任者からの言づてを伝える]
「先日の件ではたいへんお世話になりましたと○○が申しておりました」
「その件につきましては、わたくしどもの社長も、ぜひご協力したいと申しております」
 課長であれ、社長や会長であれ、「相手方」に対する敬意が優先されるため、「申す」を用いてへりくだります。
※仮に自分の上司が課長であるとして、このような場合に「たいへんお世話になりましたと○○課長が申しておりました」としてしまわないようにしましょう。役職名は敬称となるためです。課長の○○が…と、役職名を前に置き、名前を呼び捨てるのであればかまいません。

[状況ⅴ 訪問先の返事を上司に報告する]
「先方の部長に申しあげたところ、嬉しいことにご快諾をいただきました」
※「申しましたところ、嬉しいことに…」でも語法上は問題ありませんが、少々軽い印象となりますので、こうしたケースでは、「申しあげる」の方がしっくりくることが多いでしょう。

[状況ⅵ 上司に相談する]
「部長、ご相談申しあげたいことがございます」
※これも、「ご相談申したいことが…」でもかまわないのですが、やはり、「申しあげる」とした方が(折り入ってという色合いが出ますので)しっくりくることが多いと思います。

「申し伝える」、「申しつける」など

「申し伝える」は、「伝える」の謙譲表現です。ほかに同様のものとしては、「申し遅れる」、「申し受ける」などがあります。
 これらの実例としては、

「部長のお話は、わたくしから課員全員に申し伝えます」
※「課員全員に伝えます」(これも誤りというわけでなありません)よりもかしこまった言い方です。

「申し遅れましたが、わたくしは当営業所で製品管理を担当しております○○でございます」
※例えば、取引先との打ち合わせなどで、先方の一人が遅れて到着するといったことはままあることと思います。そのような時には、タイミングを見て、(なるべく自分から先に)上のように自己紹介しましょう。

「どのようなことでも、なんなりとお申しつけください」
※「(ご)遠慮なくおっしゃってください」とするよりも、『労を厭わない』心構えが伝わる表現です。

*参考 動詞の尊敬語・謙譲語のルール

尊敬語の形式
1)動詞+尊敬の助動詞「れる」・「られる」
五段動詞とサ変動詞の未然形には「れる」、上一段動詞・下一段動詞・カ変動詞の未然形には「られる」
 書く → 書かれる    する → される     出発する → 出発される
 起きる → 起きられる  受ける → 受けられる  来る → 来られる

2)お+動詞+になる
 書く → お書きになる 過ごす → お過ごしになる 飲む → お飲みになる
 【!】この「なる」に「れる」・「られる」をつけると二重敬語(誤用)
  ×お書きになられる ×お過ごしになられる ×お飲みになられる

3)お+動詞+くださる(漢語サ変の場合には「ご」)
 たずねる → おたずねくださる  同行する → ご同行くださる

4)言い換え
 見る → ご覧になる    言う → おっしゃる  寝る → お休みになる
 食べる → 召し上がる  着る → お召しになる 行く → おいでになる・いらっしゃる

謙譲語の形式
1)「いただく」、「してまいります」、「申しあげる/申しあげます」などをつける(お/ご との併用も多い)
 教えてもらう → 教えていただく 努力する → 努力してまいります
  お願いする → お願い申しあげる/申しあげます
  ※「させていただく」は「する」の謙譲表現。サ変動詞に用いることができますが、濫用は避けるべきです。

2)お/ご+動詞+する
  持つ → お持ちする 報告する → ご報告する 
 ※尊敬の2)と混同しないようにしたい。 お持ちする(謙譲) お持ちになる(尊敬)

3言い換え
 見る → 拝見する 言う → 申す・申しあげる 寝る → やすむ
 食べる → いただく 着る → 身につける 行く → 参る・うかがう 会う → お目にかかる

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こちらの記事の監修者

 浅井保(あさい たもつ)
・北海道大学文学部卒
・家庭教師のアルファ 講師部長
・山手中央高等学院 学院長

 
2008年に『家庭教師のアルファ』のプロ家庭教師として活動開始。
現在、株式会社アルファコーポレーション講師部部長、および同社の運営する通信制サポート校・山手中央高等学院の学院長を兼務しながら講師として指導にも従事。