敬語表現「いる」について|全学年/国語

勉強方法

「人間関係は、言葉に始まって言葉に終わる」そのようなことをしばしば耳にします。日々の生活は、「おはよう」の挨拶から「おやすみなさい」の挨拶で終わり、職場においても、「おはようございます」で始まり、「お先に失礼します」、それに答えて「お疲れさまでした」で終わることが多いことでしょう。そうしたことからも、言葉は人間関係の基盤(少なくともその大きな要素)と言って差し支えないように思われます。
 そうした人間関係において、敬語表現は、誤ってしまうと関係そのものにひびを入れかねないほど大切なものでありながら、単純で明快ではないために(浅野信先生も、『吾が国が敬語の国といはれるほど、極めて微妙で多色である』と述べておられます)、おかしな使い方をしてしまうことがままあるようです。文法的な決まりは(少なくともある程度は)覚えているはずなのに、実生活ではうまくそれが適用できない ― そのようなことがよくあるように思われます。これを防ぐには、典型的な例をしっかりと頭に入れておき、それを軸にして考え、判断することが有効です。ここでは、「いる」の敬語表現について、具体例を挙げながらお伝えします。確実に覚えてしまいましょう。

目次

「いる」の尊敬表現

「いる」の尊敬語は?と問われた場合、「いらっしゃる」と答える人が多いように思います。「いる」だけではなく、「おいでになる」もそれにあたると、2語を同時に思い浮かべる人も少なくないでしょう。また、敬語の文法上の原則(下の*参考 をご参照ください)に照らし合わせた場合、「いられる」も尊敬語として成立しますし、「いる」の謙譲表現である「おる」から、「おられる」も含まれます。それぞれはどのような『色合い』を持っているでしょうか。

[状況ⅰ 友人の○○くんを、勤務先のアルファ商事に訪ねた]
「○○さんはいらっしゃいますか」
 友人同士で、「おれ、おまえ」の中であっても、「○○くんはいますか」では良くありません。理由は単純で、勤務している会社(ここではアルファ商事)を含めて、自分と対等以下に見ることになってしまうからです。

「[状況ⅱ 会社の重役から内線が入り、●●課長(自分の直属の上司)が在室かどうかを尋ねられた]
(「●●くんはいるかね」に対して)
①「はい、おります」
②「はい、いらっしゃいます」
 一般的には①が良いとされます。課長ともどもその重役の部下ですから、謙譲語の「おります」を使わなければならないという論理です。その通りですが、②の「いらっしゃいます」でも悪いわけではないとする意見もあります。これは、自分と課長との距離は、重役と課長との距離よりも隔たりが大きいと感じられる(そのように感じて然るべき)場合には、こちらの方がむしろ適切となるという考えであろうと思います。また、重役に対する言葉遣いという観点、そして直属の上司に対する言葉遣いという観点を離れ、目上の方たちへの丁寧な言葉遣いとして良く、「いらっしゃいます」と答えられた重役も、自分を低く見られているとは感じないであろうという考えも成り立ちそうに思われます。

[状況ⅲ 課内のプロジェクトミーティングに、同種のプロジェクトの経験がある関西支社長に参加してもらった]
「本日は、◎◎関西支社長にお見えいただいています」
 誤用です。
「本日は、◎◎関西支社長にいらしていただいています」とすべきです。おそらくは、「◎◎関西支社長がお見えになっています」と、「◎◎関西支社長においでいたただいています」が雑じりあってしまったための誤りでしょう。

[状況ⅳ 新製品の開発計画を紹介したあと、何か質問はあるかを尋ねる]
「(何か)ご質問がございますか」
 厳密には誤りとなる、避けるべき使い方です。
「ございます」は「ある」の丁寧語です。近年、丁寧語が尊敬語の代用として使われることが増えてきており、この用法も許容の範囲内と考える人が多いかもしれません。けれども、丁寧語は自らの行為にも使われることを考えると、避けるほうが安全です。質問がある「人」がいるかどうかを尋ねる形式にすると良いでしょう。
「(何か)ご質問のあるかたはいらっしゃいますか」
 すっきりした尊敬表現になります。

「おいでになる」はさらに丁寧

ここまでは、「いらっしゃる」の用例をご紹介しましたが、「いる」の尊敬語には「おいでになる」もあります。「いる」よりもさらに(大幅にではありません)丁寧さが増す表現です。
丁寧さが増しますので、「行き過ぎ」感が出ないように用いたいものです。例えば、上記の[状況ⅰ 友人の○○くんを、勤務先のアルファ商事に訪ねた]において、「○○さんはおいでになりますか」は、少し行き過ぎであるように感じられます。取り次ぐ人は、『○○さんよりも立場的にかなり下の人が訪ねてきた』と感じることでしょう。

[状況ⅲ 課内のプロジェクトミーティングに、同種のプロジェクトの経験がある関西支社長に参加してもらった]であれば、支社長というかなり高い役職者に対してですから、使っても違和感は生じにくいでしょう。
「本日は、◎◎関西支社長においでいただいています」

[状況ⅳ 新製品の開発計画を紹介したあと、何か質問はあるかを尋ねる]ですと、使っても問題はありませんが、出席者によっては少しくどい感じになってしまうかもしれません。
「(何か)ご質問のあるかたはおいでになりますか」
 出席者が大切な取引先の方たちで占められているような場合であれば良いでしょうが、社内の提携部署からの出席という場合ですと、へりくだりすぎとなるかもしれません。

明確な違いが落とし穴に(よくある誤り「二重敬語」)

 尊敬語は、自分(や身内)がへりくだる謙譲語とは異なり、相手に対して敬意を抱いていることを伝えるための形ですから、その「伝える」を、「確実に、明確に伝える」としたい心理が働くのは当然です。しかしながら、この「明確を欲する心理」は、落とし穴ともなります。二重敬語(という誤用)がそれです。
 上記の「おいでになる」も、「おいでになられる」としてしまっているのをたびたび耳にします。二重敬語で誤用です。注意したいものです。

「本日は、◎◎関西支社長がおいでになられています」⇒ 誤用
「(何か)ご質問のあるかたはおいでになられますか」⇒ 誤用

「いる」の謙譲表現

尊敬表現に比べれば、「いる」の謙譲表現は頭を悩ませることが少ないように思います。「おる/おります」を用いればこと足りると言っても差し支えないであろうためです。
「月曜日の午後でしたら、(わたくしは)間違いなく製品開発室におります」
「月曜日の午後でしたら、(わたくしは)間違いなく製品開発室にいます」
へりくだるべき相手に対しては、「います」を避け、「おります」を使います。自分の上司を「身内」として社外のかたに話す際も同様です。
「月曜日の午後でしたら、室長の○○も間違いなく製品開発室におります」
第二段落の[状況ⅱ 会社の重役から内線が入り、●●課長(自分の直属の上司)が在室かどうかを尋ねられた]のような場合には、「いらっしゃる」も完全な誤用とは言えないでしょうが、基本的には、自分、または身内が「いる」ことを伝える場合には「おる/おります」となると考えれば良いです。やってはならないのは、例えば、他社へ電話をかけ、次のように言ってしまうことです。
「アルファ商事の○○ですが、総務の◎◎さんはおります(でしょう)か」 ⇒誤用
「アルファ商事の○○ですが、総務の◎◎さんはいらっしゃいます(でしょう)か」 とします。

※「おられますか」という表現もしばしば耳にします。西日本では尊敬表現として問題なく通用するとも聞きます。大坂で「いらっしゃいますか」を使うと、「なんや、よそよそしい」と言われることもあるため、関西勤務の時には「おられますか」を使っていたという人の話を聞いたこともあります。敬語というのは一筋縄ではいかぬものだと思わされる事例です。『極めて微妙で多色である』と浅野先生がおっしゃるのには、こうしたことも含まれているのでしょう。

*参考 動詞の尊敬語・謙譲語のルール

尊敬語の形式
1)動詞+尊敬の助動詞「れる」・「られる」
五段動詞とサ変動詞の未然形には「れる」、上一段動詞・下一段動詞・カ変動詞の未然形には「られる」
 書く → 書かれる   する → される      出発する → 出発される
 起きる → 起きられる 受ける → 受けられる 来る → 来られる

2)お+動詞+になる
 書く → お書きになる 過ごす → お過ごしになる 飲む → お飲みになる
 !この「なる」に「れる」・「られる」をつけると二重敬語(誤用)
  ×お書きになられる ×お過ごしになられる ×お飲みになられる

3)お+動詞+くださる(漢語サ変の場合には「ご」)
 たずねる → おたずねくださる  同行する → ご同行くださる

4)言い換え
 見る → ご覧になる 言う → おっしゃる 寝る → お休みになる
 食べる → 召し上がる 着る → お召しになる 行く → おいでになる・いらっしゃる

謙譲語の形式
1)「いただく」、「してまいります」、「申しあげる/申しあげます」などをつける(お/ご との併用も多い)
 教えてもらう → 教えていただく 努力する → 努力してまいります
  お願いする → お願い申しあげる/申しあげます
  ※「させていただく」は「する」の謙譲表現。サ変動詞に用いることができますが、濫用は避けるべきです。

2)お/ご+動詞+する
  持つ → お持ちする 報告する → ご報告する 
 ※尊敬の2)と混同しないようにしたい。 お持ちする(謙譲) お持ちになる(尊敬)

3言い換え
 見る → 拝見する 言う → 申す・申しあげる 寝る → やすむ
 食べる → いただく 着る → 身につける 行く → 参る・うかがう 会う → お目にかかる

まとめ

如何でしたか?最初にも述べましたが、敬語を正しく使うことは、人間関係において非常に重要です。なかでもこの記事でご紹介した「いる」については使用する場面も多いので、これを機にしっかりマスターしてください。

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こちらの記事の監修者

 浅井保(あさい たもつ)
・北海道大学文学部卒
・家庭教師のアルファ 講師部長
・山手中央高等学院 学院長

 
2008年に『家庭教師のアルファ』のプロ家庭教師として活動開始。
現在、株式会社アルファコーポレーション講師部部長、および同社の運営する通信制サポート校・山手中央高等学院の学院長を兼務しながら講師として指導にも従事。