目次
家康の正室
■築山殿/つきやまどの
生年不詳(1542年、1540年の2つが有力)
父は今川氏の一族関口義広、母は今川義元の妹。
1557年、今川家に人質にとられて駿府にいた松平元信(のちの家康)と結婚。
1559年に長男信康、翌60年に長女亀姫を出産しました。
息子信康と結婚した信長の娘篤姫とのいさかい(篤姫が男子を産めなかったこと)を発端に信康、築山殿、篤姫三者の関係がこじれ、のちには「信康と武田氏が秘かに手を握るべく動いている」という疑惑を信長が抱くことにまで発展してしまいます。
その幕引きとなったのは、築山殿の殺害と信康の自害(ともに形としては、信長の意を汲んだ家康の命によるものです)。1579年のことでした。
■朝日姫/あさひひめ(南明院) *旭姫とも
秀吉の異父妹。1543年誕生。
佐治日向守の妻でした(副田甚兵衛または副田吉成の妻とも)が、小牧・長久手の合戦後、家康との和睦を、「自分が立場として上となるように」行いたい思惑を持っていた秀吉が離婚させ、築山殿の死後長い間二人目の正室を迎えなかった家康に嫁がせました(1586年)。
1590年没。年齢もあり、家康との間に子はもうけていません。
家康の側室
■息子をもうけた側室
於万の方/おまんのかた(小督局、長勝院)
於愛の方/おあいのかた(西郷局、宝台院)
於都摩の方/おつまのかた(下山殿、長慶院)
茶阿局/ちゃあのつぼね(朝覚院)
於亀の方/おかめのかた(相応院)
於万の方/おまんのかた(蔭山殿、養珠院)
■娘をもうけた側室
西郡局/にしごおりのつぼね(蓮葉院)
於竹の方/おたけのかた(良雲院)
普照院/ふしょういん
於梶/勝の方/おかじのかた(英勝院)
■子をもうけていない側室
於夏/奈津の方/おなつのかた(清雲院)
於梅の方/おうめのかた(蓮華院)
阿茶局/あちゃのつぼね(雲光院)
阿牟須の方/おむすのかた(正栄院)
於仙の方/おせんのかた(泰栄院)
於六の方/おろくのかた(養儼院)
信寿院/しんじゅいん
於松の方/おまつのかた(良雲院)
家康に特に大事にされた二人の側室
①阿茶局(あちゃのつぼね)
家康から絶大な信頼を得、二代将軍秀忠も実母のように慕ったといわれています。
今川家の家臣に嫁ぎ、2人の男子を産みますが、結婚のわずか3年後に夫を亡くしてしまいます。
しかしながら、持ち前の気丈さと才覚で物品の商いを成功させ、浜松城内にも出入りします。
その浜松城内にて家康に見そめられ、側室となります。25歳のことでした。
女の身でありながら馬術や弓術も身につけていた阿茶局ですが、この人はある特別な才能を持っていました。
それは、今で言うドレスコーディネーターの才能です。
戦乱の世においては、他国の使者や代表との会談の場では、どのような装束に身を包んでその場に臨むかが大きな意味を持ったといわれています。
それにより、相手をどのように見ているかが示されるためで、政治的な駆け引きの重要な要素であったのです。阿茶局は、衣裳選びに抜群のセンスを持っていました。
家康はそのような彼女を頼りにし、のちには、「大坂冬の陣(1614年)」にて、豊臣氏との和平交渉という特大の任務も与えています(そして彼女は見事にその大役を果たすのです)
数々の戦にも同行した阿茶局ですが、小牧・長久手の戦い(1584年)に、妊娠中の身で同行していた彼女は流産してしまい、子どもを産めない体になってしまいました。
そのため、家康に特別に愛された女性でありながら、子どもをもうけることはありませんでした。
家康に特に大事にされた二人の側室
②於梶の方
上述の「大坂の陣」に同行した側室は阿茶局だけではありませんでした。
家康は、お梶の方という側室も連れていっています(お梶の方は、天下分け目の「関ケ原の戦い」にも同行し、勝利を手にした家康は、「今後は、『お勝の方』と名乗るよう命じたといわれています)
この人も非常に頭の切れる女性でした。それを示すエピソードが「故老諸談(ころうしょだん)」にあります。
家康が、大久保忠世、本多正信、鳥居元忠ら数人の家臣と語らっていたときのことです。
「この世で一番美味しいものは何か」と、家康はその場にいた家臣たちに尋ねました。
主君のこの問いに、彼らはそれぞれに自分の考えを披露しますが、家康は、同席していたお梶の方にも同じ問いを投げかけます。
「塩にございます」と、お梶の方。
理由を訊く家康に、「美味いという基準は塩加減にございます。
どれほど良い料理であれ、塩によらずに味が調うことはございません」と答えます。
膝を打ちかけた家康ですが、「では、この世で一番不味い食べ物は何か」と問います。
これにも三河武士たちはそれぞれさまざまな食べ物あげていきますが、お梶の方は、「いちばん不味い物は、塩にございます」と答えたのです。
「先の答えと同じではないか!」
そう言う家康に、お梶の方は、
「食べ物の不味いという基準も塩加減にございます。どれほど良い料理であれ、塩を入れ過ぎますと食べることなどかないませぬ」
家康のみならず、座の一同、深く納得したとのことです。
於梶の方は、徳川家康最後の子五女・市姫を産んでいます。
おわりに
いかがでしたか?
家康はたくさんの側室をかかえましたが、その中でも特に大事にされた2人には、やはり特別な才能があったのでしょう。
江戸幕府をひらき、現在にも歴史の教科書などで語り継がれる家康ですが、様々な偉大な功績を残せたのは、こういった才ある女性が傍にいたからかもしれませんね。
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こちらの記事の監修者
浅井保(あさい たもつ)
- ・北海道大学文学部卒
- ・家庭教師のアルファ 講師部長
2008年に『家庭教師のアルファ』のプロ家庭教師として活動開始し、数多くの生徒への学習指導を経験。
現在、株式会社アルファコーポレーション講師部部長。