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「高校授業料の実質無償化」とはどのようなものか
「高校授業料の実質無償化」とは、国が実施している高等学校等就学支援金制度のことをいい、これにより返還不要の授業料支援を受けることができます。
支給額は、公立高校で年間11万8,800円、私立高校(全日制)では最大39万6,000円(※)まで支給されます。
さらに私立高校では、都独自の支援として授業料軽減助成金を設けており、私立高校の平均授業料である年47万5,000円を上限として助成しています。
※1 私立高校(通信制)は29万7,000円。国公立の高等専門学校(1~3年)は23万4,600円が支給上限額
これによって、国公立私立問わず、高校の授業料が実質的に無料になるため「高校授業料の実質無償化」と呼ばれているわけです。
しかし、国の制度であれ都独自の制度であれ現状では所得制限が設けられており、全ての高校生が支援を受けられるわけではありません。
現行の「高校授業料の実質無償化」には所得制限が設けられている
前述のとおり、現行の制度では「高校授業料の実質無償化」には所得制限が設けられています。
支援の対象基準は次の計算式(両親2人分の合計額)によって判定されます。
市町村民税の課税標準額×6% - 市町村民税の調整控除の額
※政令指定都市の場合は、「調整控除の額」に3/4を乗じて計算。
上記の算出額が
154,500円未満であれば最大支給額が396,000円
154,500円以上304,200円未満であれば最大支給額が118,800円
となります。
例えば、両親・高校生・中学生の4人家族で、両親の一方が働いている場合、世帯年収910万円が目安となります。
東京都は2024年度から所得制限撤廃へ
東京都は2024年度から、高等学校等就学支援金制度などの授業料助成に対する所得制限を撤廃し、私立を含めたすべての高校の授業料を実質無償化する方針であることを発表しました。
これにより、都内在住の高校生全てが「高校授業料の実質無償化」の対象となり、子育て世帯の負担が軽減されるようになります。
◆教育費にかかる費用は授業料だけではない
高校生にかかる教育費は授業料の他にも、入学金、修学旅行費、学校納付金、図書・学用品・実習材料費、教科外活動費、通学費、学校外活動費等と多岐にわたります。
「令和3年度子供の学習費調査」によると、上記教育費の1年間の総額は公立高校(全日制)で約51万3,000円、私立高校(全日制)で105万4,000円となっています。
この額は国による支援制度、都独自の助成制度、各学校独自の減免制度などを除いた額であり、支援や免除があっても1年間でこれだけの費用がかかっているのが現状です。
上記は令和3年の調査による金額ですので、昨今の物価高騰を鑑みれば上記の額よりさらに費用がかかることは想像に難くありません。
◆私立高校に通う生徒の現状
現在、都立高校に通う生徒約13万人のうち現行制度の授業料助成を受けているのは約10万人となります。
一方、私立高校に通う生徒の場合、約18万人のうち助成を受けているのは約6万7,000人となっています。
つまり、都立高校に通う生徒の約77%が助成を受けているのに対し、私立高校に通う生徒は約37%しか助成を受けられていません。
私立高校に通う子を持つ世帯の多くが教育費に大きな負担を感じているのは明らかです。
まとめ
2024年度から始まる授業料助成に対する所得制限の撤廃によって、特にこれまで助成を受けられなかった私立高校に通う子を持つ世帯の負担が大きく軽減されるようになります。
東京都以外の地域もこの制度改革に続いていくのか、注目していきたいところです。