暗記の勉強法 効率的なやり方は?|全学年

勉強方法

普段の授業やテスト勉強において、暗記する内容が多くて覚えられない、覚えてもすぐ忘れてしまうといった経験を持つ人は多いでしょう。
人間の脳には忘却機能があるため、暗記にはコツが必要です。この記事では、効率的な暗記の勉強法や、記憶力を高める生活習慣について解説します。
ぜひ、普段の勉強に役立ててください。

目次

そもそも暗記自体が難しい

人間の脳には忘却機能が備わっているため、暗記自体が人間にとっては難しいことです。
もし、見聞きしたことをすべて覚えていたら、頭の中は情報でいっぱいになります。
しかし、脳の機能は誰もが同じはずなのに、暗記は得意な人と不得意な人がいます。
暗記が得意な人は効率的な暗記法を心得ています。覚えることが苦手な人は、この暗記法を実践してみましょう。

暗記ができない理由とは?


ここでは、暗記ができない主な理由を3つ解説します。なぜ覚えることが困難なのか、理由から探っていきましょう。

情報量が多くて覚えられない
情報量が多すぎるため、脳のキャパシティを超えてしまい覚えきれないことが理由のひとつです。
記憶とは、長期記憶として神経系を構成するニューロンにネットワーク化されるものです。このネットワークの容量は理論上無限とされています。
しかし、長期記憶に移行する前の短期記憶の段階では、脳内の容量はとても少ないといわれています。

短期記憶では、わずかな情報でも次々にインプットされると、長期記憶として定着する前に容量オーバーで消去されてしまいます。

◆情報が似ている場合がある
似たような情報が複数あると、正確に覚えられない可能性があります。目にした情報が似ていると、すべて同じような情報に見えてしまい、正しく暗記できません。
たとえば、一般的なテキストの場合、ページのほとんどが文字の羅列で構成されています。そのため、一見しただけでは特徴がなく、なかなか記憶として定着しません。

◆時間が経つと忘れてしまう
人は時間が経つにつれて覚えたことを忘れてしまいます。
たとえば、この記事について読んだ直後であれば、内容について説明できるはずです。
しかし、2ヶ月後に同じように説明してといわれても、うまくできない人が大半でしょう。人の脳は一度覚えたことでも時間が経つと忘れていきます。

人が覚えたことを、時間経過によってどれだけ忘れるかをグラフに表したものを、「記憶の忘却曲線」といいます。記憶の忘却曲線については、以下で詳しく解説します。

記憶の忘却曲線とは?

記憶の忘却曲線とは、時間経過による記憶の保持率の変化をまとめたグラフのことです。ここでは、その特徴について解説します。

◆エビングハウスの忘却曲線について
ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスは、無意味な音節を人に記憶させ、時間の経過ともにどれだけ忘れるかの実験を行いました。
この実験結果をグラフに表して数値化したものが、「エビングハウスの忘却曲線」です。
エビングハウスの忘却曲線では、人は覚えた内容を段階的に忘れていくことがわかりました。
グラフによると、人は20分後であれば58%を覚えているものの、1時間後には44%に、1日後には33%まで低下しています。6日後には25%しか記憶が残っていません。1時間経過しただけで、人は覚えた内容の半分以上を忘れてしまいます。
覚えた内容を定着させる方法もあります。カナダのウォータールー大学の研究結果では、暗記した内容に対して24時間以内に10分間の復習、1週間以内に5分の復習、1ヶ月後に2〜4分の復習を行うことで、記憶率が100%に戻ることがわかっています。
適切なタイミングで復習を行えば、暗記した内容を定着させることができます。

◆短期記憶と長期記憶とは?
人の記憶には、短期記憶と長期記憶があります。初めて記憶したものは脳の海馬に短期記憶として一時的に保存されます。
海馬は容量が少ないため、次々に覚えていくと古いものから消去していきます。
ただし、覚えた内容のすべてを消去するわけではなく、海馬が重要だと判断したものは長期記憶として大脳皮質に保存され、忘れにくくなります。
重要な記憶とは、命に関わる物事を指します。生命に関わる情報は、本能的に長期記憶として蓄えています。
しかし、普段勉強する内容は、ほとんどが命に直接関わるものではありません。暗記のポイントは、反復学習を行って長期記憶にするほど大事な情報であると脳を騙すことです。

効率的な暗記の勉強法とは?

覚えた内容を忘れる前に長期記憶へ定着させることが暗記のポイントです。ここでは、効率的のよい暗記の勉強法について具体的に解説します。

◆五感をフル活用して覚える
人には、視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚の五感が備わっています。この五感をできるだけたくさん使うことで、暗記による学習効率が向上します。
たとえば英語や国語などで本文の内容を記憶したいとき、黙読すると視覚しか使いませんが、音読して耳で聞くことによって視覚と聴覚を使うことになり、2倍の速さで覚えられます。
→声に出して読む

視覚と聴覚を使うために、普段の学習ではなるべく声に出して読むことがポイントです。
英単語や歴史の人物などの暗記はもちろん、参考書の解説文なども音読することで理解度が増します。
音読する際には耳栓をするのがおすすめです。耳栓をすると声に出した内容が骨伝導で頭の中に大きく響き、集中力が上がります。
→ひたすら書いて覚える

暗記学習において、ノートにひたすら書いて覚えようとする人は多いでしょう。
書くことで視覚や触覚を使うため効果はありますが、時間がかかるデメリットがあります。
書くときにはあわせて声に出して読むと効果的です。声に出すことで聴覚も使うため、より効率的に暗記できます。

◆一回で完璧に覚えようとしない
人は時間が経つにつれ覚えた内容を忘れていきます。そのため、一回で完璧に覚えようとしても、難しいのが実情です。時間をかけても一回では覚えられないので、人は忘れるものだと割り切りましょう。

◆短時間で何度も繰り返す
適切なタイミングで復習することで記憶の定着率は向上します。ポイントは、短時間でいいから何度も暗記を繰り返すことです。繰り返し覚えることによって、脳が重要な情報だと判断するので長期記憶になりやすいです。

◆暗記は夜や寝る前にやる
人は覚えた知識を眠っている間に整理して、記憶として定着させます。朝や昼に勉強しても、暗記がうまくいかない場合は、夜の寝る前に暗記してみてください。ただし、睡眠不足にならないよう注意しましょう。

◆学習範囲を絞って覚える
学習範囲を絞って覚えることも暗記のポイントです。学習範囲のすべてを丸暗記しようとしても、脳の処理が追いつかず時間も労力もかかってしまいます。重要な箇所に範囲を絞ることで、必要最小限の労力で効率的に知識を定着できます。

◆青いペンを使って勉強する
青いペンを使って勉強すると効率的です。人は青色をみると、セロトニンというホルモンが分泌されます。セロトニンには、目が覚めて集中できる、ストレスが軽減する、体調がよくなるといった効果があり、学習効率を高めてくれます。

◆ストップウォッチなどでタイムを計る
暗記に集中したいときは、ストップウォッチやタイマーなどでタイムを計ることがおすすめです。集中力が下がっていると、ダラダラと勉強してしまい効率がよくありません。タイムを計ると制限時間を意識するため、集中力が上がり効率よく勉強できます。

記憶力を高める生活を心がけよう

暗記をするためには、普段から記憶力を高める生活を心がけることも大切です。ここでは、記憶のために意識すべきポイントを解説します。

◆睡眠時間を十分にとる
人は睡眠によって記憶を整理して定着させます。普段から睡眠時間が短いと、記憶力にも悪影響が出てしまいます。
記憶を維持する上で最適な睡眠時間は、6〜7時間ほどです。徹夜して勉強したり夜ふかししたりして睡眠不足になると、記憶力や集中力が落ちてしまうため、睡眠には十分な時間を確保するようにしましょう。

◆30分ほどの昼寝も効果的
常に勉強に集中できれば問題ないですが、ときには眠くなって集中力が低下することもあるでしょう。
眠くなった場合は、30分程度でよいので昼寝するのがおすすめです。目を閉じて脳を休めることで、起きた後の勉強に集中できます。
30分ロスしてしまう懸念よりも、休憩して集中力を回復させたほうが学習全体で見ると効率的です。

◆記憶力が上がる食べ物を食べる
魚を食べると頭がよくなるという話があります。これは魚に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)が、記憶力や集中力を高める働きがあることが根拠となっています。
ほかにも豚肉や玄米などに含まれるビタミンB1や、大豆やピーナッツなどに含まれるレシチンにも、記憶力を高めてくれるので、暗記にも効果的です。

◆適度に運動して脳に刺激を与える
記憶力を上げるには、勉強だけでなく適度に運動することも大切です。脳は、複数の部分が刺激されるとより活性化します。
勉強を長時間続けると、脳の同じ箇所ばかりが刺激され続けるため、機能が低下して暗記の効率も悪くなります。
簡単な運動を行い、勉強とは異なる部分の脳を刺激することで、疲れた脳が活性化して集中力や記憶力もよくなります。勉強の合間に、休憩としてストレッチや軽い体操などを行いましょう。

記憶のメカニズムを知る

暗記の効率を上げるためには、ポイントをおさえた学習方法や普段からの生活習慣が重要です。
覚えることが苦手なお子さまも、記憶の仕組みや脳の機能といった理由がわかれば、暗記や勉強法も身につけやすいでしょう。

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こちらの記事の監修者

浅井保(あさい たもつ)

  • ・北海道大学文学部卒
  • ・家庭教師のアルファ 講師部長

2008年に『家庭教師のアルファ』のプロ家庭教師として活動開始し、数多くの生徒への学習指導を経験。
現在、株式会社アルファコーポレーション講師部部長。