数学はなぜ学ぶ?メリットを詳しく解説!|全学年/数学

勉強コラム

日本では、数学が義務教育の範囲に定められています。そのため、ほとんどの日本人は数学を習うことになります。
でも、「数学ってなんでやらないといけないんだろう?」「これって大人になってから役に立つの?」
…そんな疑問を抱いたことはありませんか?筆者も学生時代、そう思っていました。

そこでこの記事では、数学を学ぶメリットを、できるだけわかりやすく解説していきます。
この記事を読んでみて、少しでも数学を学ぶ気持ちになれれば幸いです。

目次

文部科学省はこう言っている


「学校教育で数学を学ぶ意味」については、実は文部科学省の公式HPに書いてあります。
ただし本文は2,500字ほどあるため、ここではポイントを簡単にまとめてご紹介しようと思います。

■「数」「図形」「言語」は社会生活をおくるうえで必ず必要になるもの。
■特に現代の科学文明では、多くのものが数値化されて表される。だから安心して生活するためには数学が必要。
■数学は論理的思考力を育てる。それは日常の素朴な問題の解決や、他者とのコミュニケーションにおいても大切な力。
■さらに、他の学問を理解するためにも数学が必要になってきている(自然科学、工学、社会科学、人文科学など)

さらには「数学は2000年にわたる人類の成果」「数学は自分で問題を解いたときの楽しさを知る最適な教科」「数学は美しい」などなど、いろいろなことが謳われていますが、ここでは割愛します。
気になった方はぜひ本文も読んでみてください。

さて、これを読んで「なるほど、数学は大事なんだ!じゃあ勉強頑張ろう!」となれば良いのですが、現実はなかなかそう上手くはいきませんよね。
そこでここからは、上記の文部科学省の提示するポイントをもとに、数学を学ぶ意味についてもう少し詳しい具体例を挙げながら考えていきましょう。

日常生活ではこんな時に役立つ!


文部科学省も言っている通り、数学は現代社会を生きていくうえで非常に重要な学問と言えるでしょう。
そこでまずは、日常生活において数学が必要になるor役立つシーンをカンタンにまとめてみました。

■ショッピング
「数学が役立つシーン」と聞いて、多くの人が最初に思い浮かべるのがやはり買い物でしょう。
足し算、引き算はもちろん、場合によっては掛け算や割り算も必要になってきます。
特に、少しお高めの買い物をする際は、財布の中身と相談しながら、最終的な支払金額を分かっておく必要がありますよね。
例えば「今日はセールで通常12,000円の商品が25%引き!」「さらに2つめの商品からは50%引き!」というシーンがあったとします。
暗算は諦めて、スマホの電卓機能で合計金額を知ろうと思っても、どういう式を作れば良いかを分かっていなければ答えは出せませんよね。
それには、必ず数学の勉強が必要になってきます。

■料理
料理をする時は、材料の分量はもちろん、調理時間も計算しながらテキパキ動く必要がありますよね。
また、レシピを変えるときや倍量するときも、基本的な数学が必要になってきます。
「この材料がこれくらいあるから●人分の○○は□時間あれば作れるし…」などと考えている時も、無意識に数学を使っているのです。

■旅行
どこかに旅行に行く際も、意外と数学は役立ちます。
旅行計画を立てる時や、移動中の時間の計算には基本的な数学が必要になります。
特に海外旅行では、通貨の計算も必要になるため数学の重要性が増してきます。

■健康管理
自分の健康を管理する上でも、数学的な考え方が必要になる場面があります。
例えばBMI値やカロリーの計る時や、血圧や脈拍数のモニタリング、運動の計画や効果測定の際には、計算能力や数字を読み解く力が必要になります。

■ニュースや新聞を読む時
世の中の情勢を知る時にも、ある程度数学を理解しておく必要があります。
ニュースや新聞では、統計データや経済的な数値(予算、成長率、インフレーション率など)、科学や医学に関する数値など、様々な分野で数学的な表現がされています。
今、社会で起きていることを正しく読み取り、過去の傾向や将来の可能性を予測するには、数学は必ず学んでおく必要があるでしょう。

この他にも、日常生活で数学が役立つシーンは無数に存在します。

数学は「論理的思考力」を鍛えられる?


よく「数学は論理的思考力を養うために必要だ」という意見を耳にしますよね。これは先述の通り、文部科学省も言及していることです。
では、なぜ数学を勉強することが、論理的思考力を鍛えることに繋がるのでしょうか。この章ではその理由について見て行きます。

■論理的構造の理解
なんとくなくイメージできると思いますが、数学という教科は論理的な構造を持っていると言えます。公理や定理、論証などが良い例ですね。
つまり数学の勉強をしていくと、問題を解くために論理的構造を分解・展開し、理解する能力が付いていくのです。

■証明問題は分かりやすい例
数学の問題では、結論を導くための正確な証明が求められることがあります。いわゆる証明問題ですね。
苦手な人も多いかもしれませんが、証明問題は論理的な思考や論理の進行を理解し、他の人に説明する能力を養うことに繋がるのです。
これは実社会に出てからも、人とのコミュニケーションにおいて非常に重要になる力です。

■抽象的な概念の理解と、問題解決の手順の構築
抽象的な概念を上手く自分の中に落とし込んで理解することも、生きていくうえでは大事になってきます。
数学はしばしば抽象的な概念を扱います。数学は抽象的なアイディアと具体的な問題を結びつけ、論理的に解決するスキルが養われます。
また、数学の問題解決は一般的に、定められたの手順に従うように習いますよね。まず問題を理解し、それを解くために必要な情報を見つけ出し、それらをもとに解を導くという作業は、論理的思考に必要となる「物事を整理する」ということのトレーニングになります。
そしてこれは、複雑な問題であればあるほど、必要になる力です。

論理的思考力は人とのコミュニケーションでも重要!


前章では数学を学ぶことが、論理的思考力を鍛えることについて触れてきました。
この論理的思考力は、人とのコミュニケーションにおいても非常に役立ちします。

■人に何かを説明するとき
人に何かを説明するときは、物事をできるだけ分かりやすく伝える必要がありますよね。
そのためには、自分の考えや事実等を整理し、話を組み立てていかないといけません。
このような作業を頭の中でする時、論理的思考力は絶対に必要になります。

■問題を解決するとき
例えば、友人から何らかの悩みやトラブルについて相談されたとき、相談された側は問題解決能力が試されます。
この時、数学的な問題解決に慣れておくことで、あまり自分が詳しくない分野や、日常生活の他愛もない問題にも論理的にアプローチするスキルが身につきます。
一つ一つ丁寧に、且つ論理的に問題を解決していけば、きっとその人は多くの人から頼られる存在になるでしょう。

■異なる意見(視点)を理解するとき
人とのコミュニケーションにおいては、自分と異なる意見を持っている人も尊重し、柔軟に考えることも大切です。
数学的な問題に取り組むとき、問題を異なる視点から捉え、論理的な転換を行うことがあります。
これは人との意思疎通を図るうえで、異なる意見や立場の違いを理解しやすくする能力にも繋がります。

数学は他の学問を理解するときにも必要

なんとなくイメージできると思いますが、数学は他の多くの学問を学ぶ際も必要になります。
ここではその具体例を紹介します。

■物理学
物理学は自然界の法則を理解する学問です。これを理解するためには、数学的な知識が不可欠です。
物理学では様々な現象や法則を数学的にモデル化し、グラフや方程式を用いて表現していきます。
例えば、運動方程式や波動方程式などは数学的なモデルに基づいています。

■化学
化学もまた反応や分子構造を数学的に表現する学問です。
反応速度の計算や物質の組成の予測など、化学のさまざまな側面において数学が利用されています。

■生物学
生物学においても数学は欠かせません。
例えば生態系の動態の解析、遺伝子の組み合わせ、進化のモデル化などには、数学的な知識が必要になります。
特に生態学や遺伝学では統計学がよく用いられます。

■経済学
経済学においても数学は広く利用されています。
経済学は個々の経済主体や市場の行動を数学的にモデル化し、経済現象を理解しようとする学問です。
そのため、微積分や統計学などが経済学において非常に多く利用されます。

■心理学
意外かもしれませんが、心理学においても数学は必要になります。
計量心理学など、心理学においても統計学や確率論などが使われ、心理学的な実験や調査データの解析が行われています。

■工学
これはイメージができるかもしれませんが、工学には数学は不可欠です。
あらゆる分野の工学における、構造解析や制御理論、電気回路の設計などに数学が必要です。

■コンピューターサイエンス
コンピューターサイエンスにおいても数学は欠かせません。
アルゴリズムやデータ構造の理解には数学的な考え方が必要不可欠です。
特に離散数学や線形代数はコンピュータサイエンスにおいて基本的な役割を果たします。

もちろんここで挙げたのは一部の例ですので、まだまだ数学が役立つ学問はいくつも存在します。

一方で今の数学教育には問題点も…

ここまで数学を学ぶ意味やメリットについて解説してきましたが、現代の数学教育は完璧かというと、必ずしもそんなことはありません。
今の日本の数学教育に問題があることは、文部科学省の公式HPにおいても次のように書かれています。
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残念なことに、受験問題の解法のテクニックのみを教えることに特化した「受験にのみ役立つ数学」が、盛んになっている。高等学校で「受験にのみ役立つ数学」が盛んになる重大な原因の一つが、短時間に多数の解答を要求するセンター試験(※現・大学入学共通テスト)にあることは否定できない事実であり、早急に改善することが必要とされる。
~(中略)~
また、「受験にのみ役立つ数学」は、「数学は公式を暗記してそれに数値を当てはめて問題を解くこと」という誤解を広め、多くの「数学嫌い」の生徒を生み出している。しかし、多くの「数学嫌い」の生徒は、本当は数学を分かりたいと密かに願っている。その願いに応える数学の教育を構築する必要がある。


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つまり、現在の数学教育は受験にのみ役立つものばかりで、数学本来の魅力が伝わっておらず、それが数学がキライな生徒を生み出す原因になってしまっているということですね。これには共感できる人も多いのではないでしょうか。

しかしながら、この記事でも述べてきたように、数学を学ぶことが人間にとって重要な能力を育み、それが実社会でも役立つことも事実です。

それらを踏まえ、【数学の勉強が嫌になった時の対処法】について、筆者からいくつかご提案です。
①:数学本来の面白さに触れるため、動画サイトなどで数学に関する動画を見る
 →例えば、フェルマーの最終定理に挑んだ数学者たちの実話などはとても面白いです。学校で習う数学とはレベルが違いますが、それを分かりやすく解説している動画もあります。

②:「この問題が解けるようになれば自分のいろんな能力がレベルアップする!」と考えてみる。
 →ちょっと大げさかもしれませんが、この記事で述べたように、数学の問題を解くことは論理的思考力等、様々な能力を養うことに繋がります。

③:数学が得意な自分をイメージする
 →強い苦手意識がある場合、問題を解く前に諦めてしまっている人もよくいます。そんなときには「根拠のない自信」を持つことも必要です。「私にとってはこんな問題余裕~♪」と思い込みながら、簡単な問題から少しずつ順を追って解いていくと、それによって難しい問題を解くための前提知識が身に付き、案外解けてしまうものです。